とあるところに、佐藤さんがいました。
佐藤さんは山菜取りや、自然に生えているキノコ採りが趣味でした。
んで、佐藤さんは頻繁に熊が出る山に入っていました。
しかも単独で。
熊除けスプレーの存在は知っていましたが、今迄何十年も入山して被害が一切無かったので、熊を舐めていたので、熊除けスプレーは買っていませんでした。
金欠を理由にしていましたが、熊除けスプレーを数本購入する程度の資金は、本当は余裕でありました。
ただ、熊除けスプレーなんかに金を出す位ならば、その金で美味しい食べ物を食べでもした方がよっぽど得だ!と考えていたのです。
なので、熊除けスプレーのような、万が一の時の為の道具には、一切出費しませんでした。
そんな佐藤さんにも、遂に終わりがやってきました。
そう、遂に熊と遭遇する時が到来したのです。
佐藤さんは今迄の人生で、何度か熊に遭遇していましたが、全部、何の被害も受けずに終わったので、熊のことを舐めていました。
その日も佐藤さんは毎度の如く、熊に反撃する為の道具は一切持たず、山に山菜と茸獲りに入りました。
暫く山中をウロウロしていると、一匹の狂暴な熊に出会いました。
熊は佐藤さんを見て、暫くは警戒していましたが、その後、襲い掛かってきました。
佐藤さんは老体だったし、何の反撃手段も持ち合わせていなかったので、そのまま皮膚を噛み切られ、顔面はズタズタにされました。
佐藤さんは呻き声を上げつつ、数時間かけてゆっくりと絶命していきました。
その後、佐藤さんが山から帰ってきていないことに気付いた地元の人々が捜索隊を編成して山に分け入りました。
そうしたら、捜索隊の面々も熊に襲撃され、追加で四人が死にました。
あと、五名、重症で脚を切断する羽目になりました。
佐藤さんという一人の馬鹿のせいで、追加の被害が甚大でした。
まあ、追加で山に分け入った捜索隊の面々も、熊を舐めて熊除けスプレーを持参しなかったせいでもありますが。
単に狂暴な熊と遭遇しなかったという、今迄が運が良かっただけだったのに、それがあたかも自分の実力の如く勘違いしたせいで、このような悲惨な結末に至りました。
本当に、言っても聞かないからね。
医学の知識なんて微塵もないくせに、自身の体の不調に関して「大丈夫」とか平気で言う輩のなんと多いことか。
無知の馬鹿が一番怖いよな。
終わり